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2007年6月15日更新

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韓国

体験レポート(大学院4)

北村 唯司さん
ソウル市立大学校
日韓の大学における授業・教育の違い
私はおよそ15年にわたり韓国で生活しましたが、機会があって、2000年3月から2004年2月までの4年間、韓国の大学校で日本語を教えることになりました。まず、制度的な面から見ますと、韓国の大学校は3月に新年度が始まり、6月までが1学期で、7~8月が夏休み、9月~12月までが2学期、そして1~2月が冬休みとなっています。また、それぞれの学期は16週前後となっています。日本の大学は授業を1学期で13週前後行いますので、単純に計算すると、韓国の方が1学期で3週前後、授業が多いということになります。授業単位の仕組みは、日本では週90分単位で授業を行い、それも年間を通して1つの科目の講義を行うことが多いですが、韓国ではいわゆるセメスター制で、一学期で講義が完結するところがほとんです。そして週に3時間、つまり180分の授業を行います。
実はこの3時間というところが曲者で、多くの学校では週に2時間+1時間、例えば火曜日に2時間、金曜日に1時間という形で1つの科目の授業を行います。そこで、外国語科目などの実習科目では、2時間授業での授業のやり方と1時間授業でのやり方を変える必要があり、教える側にとっては一工夫必要なところでした。もう一つ付け加えますと、韓国の大学では日本とは違い、時間割に昼休みの時間がなく、各人の授業の空き時間に昼食を取るという形を取っています。例えば、12時から15時まで授業が続く曜日は11時過ぎに昼食を取ったり、11時から13時まで授業がある曜日には13時以降に食事を取ったりするわけです。これは、昼食時の学食の混雑を避けるという面ではプラスに働くでしょうが、毎日規則正しい時間に昼食を取りたいという人にとっては不満の出るところです。
次に、授業の内容ですが、私の場合、韓国ではネイティブ・スピーカーとして母語である日本語を、日本では自分の学習言語である韓国語を教え、また韓国では日本語を専攻する学生たちに専門科目として、日本では韓国語非専攻の学生たちに教養科目として教えているため、一概に比べることはできません。ただ、私の実感としては、同じく基礎から学習する学生たちに同じような内容の授業をしても、韓国の学生たちの方が上達が早いような気がします。私の経験ですが、日本で初めて韓国語の授業を受け持つ時に、韓国語学習2年目の学生たちの科目を受け持ったのですが、そのクラスのコースデザインをするのに、韓国で日本語を教えていた時の2学期目のクラスのレベルと内容を参考にしました。そして、実際に授業をしてみると、どういうわけか全く反応がないのです。学生たちに聞いてみると、難しすぎるということでした。その時に私は、韓国での日本語教育の経験を、単純に韓国語に変えて日本での韓国語教育に当てはめることができないことを悟らされました。もちろん、これも一概に比べられるものではありませんが、私が感じる限りでは、同じような内容を同じように教えても韓国の方が授業の進度が早く進む、すなわち学生たちの吸収が早いと言えるような気がします。
私なりに、これはどうしてなのかと考えてみると、まず言えることは、授業に対する集中力が違うような気がします。韓国社会は、日本にも増して受験に真剣に取り組むことで有名ですが、そこで見られる激しい競争意識は大学に入ってからも継続されており、それは大学の授業でいかに良い成績を取るかという形で現れてきていると思います。それはまた、卒業後にいかに良い職業に就くかという競争として継続されるのではないでしょうか。先ほど、制度的な面で一つ言い忘れましたが、韓国の大学での成績評価は、相対評価制を取っています。大学ごとに、A(優)は成績上位者の何%、B(良)は何%までと厳しく決まっていて、誰も違反できないようになっています。日本では、私の知る限り、それぞれの先生の裁量に任せられる絶対評価制を取っている所がほとんどだと思います。これらの評価方法の良し悪しはともかくとして、韓国ではこの相対評価制が学生たちの競争意識に影響していることは否めないと思います。それに韓国人学生の集中力の要因としてもう一つ考えられるのは、語弊があるかもしれませんが、注入式教育、すなわち教師から生徒に知識を伝達する教育に慣れているという点です。これは儒教的な師弟関係の価値観が根底にあるのではないかと思いますが、師が教えることを一つ漏らさず吸収するのが良い弟子だという考え方があり、小学校からの学校教育を通してそれがずっと訓練されてきたのではないかという気がします。とにかく、韓国の大学生たちの授業に対する集中には目を見張るものがあり、教えていると、まるで何でも吸収する中高校生にでも教えているかのような錯覚に陥るくらいでした。
上で既に韓国の大学生に関して少し触れましたが、最後に、日韓の学生を簡単に比べてみたいと思います。まず、私が韓国の大学で生活しながら驚いたことは、図書館に入り浸りになっている学生の多さでした。端的な例を上げると、韓国の大学の図書館は朝5時ごろから夜12時ごろまで開館しており(最近は24時間開いている所もあるようです)、テスト期間が近づこうものなら、朝5時前から図書館の入口の前に開館するのを待つ学生の行列ができるほどです。そして、閲覧室に自分や友達の席を取っては、授業や食事の時間を除いて、ほぼ一日中図書館にいて勉強に励むわけです。日本ではまず考えられないことでしょう。
次に、授業での学生たちの反応についてですが、韓国の学生たちの方が積極的に授業に参加しようとする意識が強いと思います。これは先ほど述べた儒教的な教育態度と矛盾するように思えるかもしれませんが、韓国では先生の言うことをしっかり聞くと同時に、自分の意見をしっかりと言えるようにも教育されているようです。これは対人関係においても顕著に表れますが、自分の意見をあまり述べようとしない日本人に対して、韓国の人は自分の意見をはっきりと述べようとする傾向があります。このような態度が授業では、先生の話に対して相槌を打ったり、質問するなどの形で表れてくるわけです。ある有名な韓国学の学者が言っていましたが、日本の演芸文化は舞台芸能、すなわち演じる人と観客の間に一線が引かれているのに対して、韓国の演芸文化は広場(マダン)芸能、すなわち演じる人と観客が入り混じる文化であるという話を聞いたことがあります。学校の授業においても、教師が一方的に授業を演じるのではなく、学生も一緒になって作り上げていくという雰囲気があると思います。私が韓国で授業する時には、ここでこういう冗談めいた話をしようと毎時間予め準備しておいて、学生たちが喜んで笑う反応を楽しみにしていたものですが、日本で学生たちを大きく笑わせることができるのは、せいぜい1学期に1、2度のことです。もっとも、これは私自身に問題があるのかもしれませんが…。

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